フランスの旅 - Day 5 (Tue)25/07/2000
昼食を兼ねて郊外大型ショッピングセンターに出かけた。 ジェルメーヌ、ブリジット、ジェシカと3世代の女 性、そして珍しく次男もついてきた。 バカンスの季節は交通量が少なくて道路はスイスイの筈だったが逆にあちこちで掘り起こしている道路工事のせ いで交通麻痺に巻き込まれて20分でつくところを1時間半ほどかかってしまった。
実はノートを買おうとあちこちのスーパーや文房具店で探したのだがどうしても罫線の入っているものがない。 ここにある大型スーパーでもどういう訳かどのノートにも目の大きさは多少違うが方眼紙のように縦横両方に入っ ているかまたは白紙のものしかない。 ブリジットに聞いても罫線のノートはフランスでは見かけないようだ。 CD売り場には試聴できる設備があり、 懐かしのジョニー・アリデーの最新アルバムが特等席を占めている。 フレンチ・ロッカーとして現役であるだけ でなくかなり売れているようだ。 とにかく店内が大きく通路も道路のように広い。 2フロアを繋ぐエスカレー ターはスロープになっていて大きなカートごと移動でき、店員さんもワイヤレスを着け、羨ましそうに眺める次男 のそばをローラーブレードでスイスイと気持ちよさそうに移動している。 この広さ、大きなカートを押して歩い ても人にぶつかることもない。 こうした贅沢な空間は狭い土地に人がひしめき合っている香港と比べると実に快 適で羨ましい。 しかしショッピングセンターそのもののデザインの斬新さや贅沢さについては香港の一流のもの の方が上を行っているような気がする。 ところが決定的に違うのが店員さんの態度。 気持ちのよい「ありが とう」の言葉が必ず笑顔でやってくる。 ある香港の高級スーパーでは品物を渡す時やお金を受け取る時、店員 全員に「Thank you. Have a nice day!」 と言わせているところがある。 もちろん自然にそれが出て感じがよい人もいるがまったく抑揚のない早く言い終えたいだけの気持ちが露骨に分 かる言葉なら逆効果である。 この辺は生活の余裕から来ているのだろうか。 自然、社会、労働、住宅と環境 に恵まれ夏はだれもが最低1ヶ月の休暇をたっぷりと楽しむ。 自然環境は別としてこういうのは最初からあった わけではなく貧しい時代に築きあげた成果なのだ。 衣食足りて礼節とはいうが足りてから礼節が成熟するのに時 間がかかるのか、民族の文化の違いなのか。 いかん、また香港暮らしの愚痴が出てしまった。
昼食時になると多くの人たちがバゲットのサンドイッチをかじりながら歩いている。 フランスでまずいパンに遭 遇する心配はまずない。 ましてや店の前に行列があるところなら間違いなし。 4年前に初めてマクドナルドに 入ったときはビールがあるのに驚いたが値段は香港に比べると随分高かったような気がする。 以前の交換レート はフラン1に対し香港ドル1.5位だったが、今はほぼ1対1。 今回もざっと見たところ2倍ぐらいの感じだっ たが商品の種類が豊富でサラダやケーキがおいしそうだった。 しかし私たちは迷うことなく伝統派。 次男も迷 った末結局バゲットのサンドイッチ。
夕方ニコラをアルバイト先まで送って来たロベールが珍しく興奮して帰ってきた。 ドイツ人の団体を乗せてニュ ーヨークに向かったコンコルド機がシャルル・ドゴール空港を離陸直後に墜落した。 テレビをつけると墜落現場 の畑は煙もうもう。 乗客乗員100人あまり全員死亡。 コンコルドにはフランスの威信がかかっているし、ま してや愛社精神の強いロベールにとっては一生を捧げた元の職場であり大変なショックだったようだ。 しかし現 役スチュワーデスであるレモンドは超音速飛行にはどのような身体的悪影響があるか十分に解明できていないので 自分はできれば乗務を避けたいと言っていた。
シャルル・ドゴールができる前はオルリーがパリの空港だったためご近所のお友達や身内にもフランス航空に勤め る人が多くみんな仲間意識が強くファミリーのように仲がよい。 夕食のパンを買いに行った帰りに立ち寄った家 のロランもロベールのフランス航空の元同僚。 彼も今は引退して悠悠自適の生活。 生憎と胆石の手術で入院中 だったが夫人のジャックリーヌと結婚して2階に住むお嬢さん夫婦の台所で食前酒をご馳走になる。1階にあるロ ラン夫妻のサロンには巨大なイノシシと鹿の剥製が壁にかかっており仕留めた年月日と体重が記されている。 お 嬢さんのご主人ティエリもエアフラにお勤め。 ロベール、ティエリを始めエアフラ関係プラスご近所のお友達グ ループで冬の間定期的に出かける狩で仕留めた大物なのだそうだ。
私たちがおしゃべりしている間次男は広いお庭を勝手にうろうろ探索し前回ここで大勢の人たちとバーべキューを ご馳走になったのを思い出したようだ。 ロラン夫妻の田舎の別荘で採れたミラベルも大きな箱に沢山あってそ のおいしさまでよみがえってきたようだ。 最初は人なつこい犬や猫を相手にしていたが突然何を思ったのか庭箒 を取り上げ表の門から後ろの庭の端にあるガレージまで続くドライブウェイを掃きだした。 それも一生懸命、汗 だくになってすっかりはまっている状態だ。 ジャックリーヌはポルトのグラスを片手に面白そうに 「あらま、 助かるわ。どんどんやってちょうだい。」 と発破をかける。 次男はフランスに来て以来ずっとカウチポテト 生活を続けていたので運動不足だったようだ。 しかしそれよりはむしろ香港のアパート暮らししかしたことがな い彼にとってフランスの家庭の庭は楽しくて仕方がないようだ。
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