10月9日号


フランスの旅 - Day 9 (Sat)29/07/2000 ブルターニュへ


フランス北西の端に位置するブルターニュ地方。  ロベールとジェルメーヌも何度もバカンスを過ごし、出来れ ば老後の生活を自然に恵まれ風光明媚なブルターニュで送りたいと言っていた。 次回は大きな家を借りて皆でバカ ンスに行こうと前回渡仏した時にブリジットから写真が沢山載ったブルターニュの本をプレゼントしてもらった。  残念ながら今回ブリジットたちと行く計画は実現しなかったが幸運にも別の友達からお誘いを受けた。

次男の小学校一年からの友達アレクサンドルとはかれこれ8年のお付き合いになる。 アレクサンドルのママ、イ ヴォンヌはブルターニュ地方出身のフランス人。 毎年2ヶ月の夏休みに帰省し、彼女のお母さん、8人兄弟姉 妹、それぞれの家族が集まり大きな家を借りて賑やかなバカンスを楽しんでいると言う話を聞いていた。 ブルター ニュ独特の麻のレースで作られたクワフと呼ばれる女性用の高いヘッドドレスを着けた民族衣装、ケルト系の音楽 や踊り、パルドンと呼ばれる巡礼のお祭りなどブルターニュの話を聞かせてもらうたびに興味をそそられてきた。  昨年、映画「マリーのカウンター」でブルターニュの戦前から1970年代までの田舎の人々の暮らしを見て是 非行ってみようと決めたのだった。 あいにくイヴォンヌ達のバカンスの家は今年に限って借りられなくなったので 彼女の実家に1週間お邪魔させてもらうことになった。 

イヴォンヌ達は7月早々に香港を発ち、すでにブルターニュ入りしているのでパリに住む彼女の妹、アニェスと 夕方モンパルナスの駅前で待ち合わせし、TGVで彼女達の実家があるSt.Brieuc(サン・ブリユ) に連れて行っ てもらうことになっている。 もちろんアニェスとは初対面だが示し合わせた服装とイヴォンヌに似た顔立ちですぐ 分かった。  TGV (train a grande vitesse) と言うからには新幹線並のスピード。 だとすると1時間ぐらい で到着すると期待していたのだが意外とゆっくりと走り途中何度も停車しブルターニュ地方北東部のSt. Brieuc に 到着したのは3時間半後。 後から聞いた話によると最初パリーリヨン間が開通してからTGV網は全仏に広まったが どの路線にも必ずしもTGV専用の線路が敷かれたわけではなく、在来線を使っているところでは期待されているよう なスピードでは走れないことになっているようだ。

私たちが乗ったのは二等車だがドア付近にスーツケースを置くスペースも十分あり、横2列ずつの座席は日本の新 幹線普通車よりはゆったりして快適だ。 アニェスは独身のキャリアウーマンでもちろん子供はいないが英語が うまいし次男とふざけたりしてよく遊んでくれた。 2時間を過ぎた頃、前の座席にいる2?3歳ぐらいの男の子が飽 きてぐずりだした。 次男が持ってきたお菓子をあげたりして遊んであげると、すっかりご機嫌になって 「モン  コパン (マイ フレンドぐらいの意)」を連発し、「狐と熊の絵を描いて」など、次男は次々と矢継ぎ早に出 されるリクエストに応えて大忙し。 彼らは終着駅ブルターニュの西の端ブレストまで行くそうだ。

ブルターニュ(英語名ブリタニー)はイギリス海峡を隔てイギリス南海岸とはすぐの位置にあるため古くからアイ ルランド、スコットランド、ウェールズ、コーンウォールなどのケルト系民族がブリテン島アングロサクソンの侵 入を逃れるため住み付き、独特の文化や風習を育ててきた。 フランス語が公用語になる以前、下ブルターニュと呼 ばれる西部ではケルト系のブルトン語が、東部の上ブルターニュでは北フランス方言のゴール語が話されていた。    お互い全く別の言語なので両者のコミュニケーションは成り立たない。 むしろ海を隔てたウェールズやアイル ランドの言葉の方が通じるし民族的な同胞意識もあるようだ。 韓国と日本、オーストラリアとニュージーランドの ようにイギリスとフランスも隣国同士のライバル意識と親近感とがない交ぜになった複雑な愛憎関係があるよう だ。 フランス人は相手が英国人だと少しバカにすることがあるが、ウェールズやアイルランド民族だと分かると 態度がころっと変わるそうだ。

St. Brieuc はパリから行くとブルターニュのほぼ入り口にあたるCote d’Armor 県の中心。 その名も海の国。  6世紀の末ウェールズの聖人Brieucがこの地を訪れ布教活動の中心にしたことからこの名が付けられたそうだ。 有 名なところではSt. Malo(サン・マロ)などこのあたりには他にも同じような理由でSt.がつく地名が多い。 以 来漁業や海運業など海とのつながりは強い。  St. Brieucには予定より30分遅れて夜9時に到着。 空はまだ 十分明るい。 駅にはイヴォンヌと彼女のすぐ上の姉、マリーが迎えに来てくれていた。 案内された彼女たちの 実家の前庭にはブルターニュの代表的な花、紫陽花が咲き誇り、古い石造りの家の中の家具や置物はどれもこれも 磨きこまれたアンティーク。 次男はやっとアレクサンドルに会えうれしくて仕方がない。 アレクサンドルの弟、 ローランとクロードそしてマリーの7歳の長男マルタン、男の子合計5人は二階のTV部屋で興奮して大暴れ。
 
ブルトンには Le Behan、 Le Coant、Le Coz 、Le FurなどLeで始まる苗字が多く、それぞれ愛称として始まったも のが定着したようだ。 イヴォンヌの実家もそうした名前で仮にLe Pennec としておこう。 私たちを迎えてく れたイヴィンヌ達のお母さん、マダム・ルペネは上品でにこやか、かつとても楽しい人。 冗談を交えながら7 5歳とはとても思えない美しい歌うような声で話す。 そして「昔は皆で台所仕事をしながらこうして歌ったもの だわね。」と3姉妹とそれぞれの持ち場でコーラスが始まる。 姉妹がいない私にはとても羨ましく思えた。


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