2003年8月23日号

広州 − 2003年夏

4年ぶりに訪れた広州は想像を遥かに超えた経済発展を遂げていた。香港の九龍駅を発した直通列車は広州東駅に着く。この駅は4年前に出来たが工事は今も続いている。当時泥だらけの工事現場だった周辺の変わりぶりには目を見張った。駅のすぐ外側には巨大な滝、そこから広州で一番の超高層ビル、シティック・プラザまで花壇の美しい公園が続いている。その先の天河体育館の周辺も整備が終わり緑の公園で囲まれ、ずいぶん町並みが美しくなっていた。車で進むほど夥しい数の高層ビル群に圧倒される。ちょっと前まで農地だったところにも高層住宅群が恐ろしい勢いで建設されている。それも奇抜なデザインの物が多く、建物のてっぺんにアクセントをつけるのが流行っているようだ。町の中心には高架高速道路が整備されていて以前幅を利かせていたオートバイがめっきり減り、それに代わった車はピカピカの新車がほとんど。こうして高速を走っていると六本木や淀屋橋あたりのほとんど変わらない。しかし運転マナーの方はまだまだ追いついていなくて、もともと譲り合いの気持ちなど持ち合わせている人が少ないから、渋滞や事故が多い。



左の古い建物と右側のピカピカビルが対照的。その中間というのが少ない。



整備が進んだ道路の両側には高層建築がどんどん完成していく。


この10年程で夫の仕事の基点は香港から広州に移行した。中国各地を移動する時を除いてほとんど広州ですごすようになった。最近では香港に戻れるのはひと月に一度か二度程度。たまには陣中見舞い兼、表敬訪問ということで週末にかけて出かけてみたのだ。

夫は広州で何度か引越ししているが現在は珠江を望むホテルのサービス・アパートメントに滞在中。アパートメントといってももともとそれように作られてわけではなくホテルの部屋を二つ繋げて一つはリビング・ダイニング用にし、バスルームを簡単なキッチンに作り変えたもの。 窓の下にはホテルのプールと芝生の広い庭。屋内プール、ジム、ゴルフ練習場も完備していて健康管理には理想的。ビュッフェ形式の朝食付きだし、レストランやルームサービスという手もあるから食事の心配もない。 部屋からの見晴らしもよく、夜ともなるとネオンで飾り立てた珠江クルーズの観光船が行き交う。しかしそのネオンはパリのバトー・ムーシュとは大分趣が異なり、どうしてもパチンコ屋風というところがご愛嬌。

ある朝ホテルの玄関を出たところできんきらゴールドのベンツが目の前に止まった。そんなものでギョッとしてはいけない。降りてきたおばさんのいでたちには吹っ飛びそうになった。きんきらの金髪、でっぷりと肥った体をむちゃくちゃな服装に押し込め、トドメは今流行りなのかLとVを派手な色で散りばめたバッグ。ははん、どうもこういうのがご当地流行のヌボー・リッシュ・マダムの典型か。 どこかの国でも似たような光景をちょっと前に見かけたような気がしないでもないが、ここまではねぇ。



これが珠江(パール・リバー)どこからこの名前が来たのか不思議なぐらい水が汚い。もともと中国の河川は大量の土砂をふくんでいるので濁っているが、この辺の水は黒く濁って見える。時々ゴミをすくう小船が行き来していてこれでも綺麗になったほうなのだそうだ。河の真中に浮かんでいる砂洲「二沙島」は超高級住宅地として開発中。河の向こうは郊外に続きここも建設ラッシュ。 公害対策もしっかりやってくださいよ。



昼間だからそれほどには見えないが、このド派手なネオン。キャバレーかパチンコ屋かと思いきや、何の事はない普通の中華レストラン。とにかく中国の人は派手なのが好きなのだ。



広東現代美術館

北京やその他の都市に比べると広州の観光名所はずっと少ない。 しかも夏場は暑すぎて日中戸外を散歩する気にはなれない。そこで見つけたのが広東現代美術館。

二年ほど前に出来たという近代的な建物。珠江の中洲、二沙島内の高級住宅街にあり、すぐ隣にはコンサートホールが出来ている。 現代中国の作品が主で1930年から現在までの絵画、彫刻、オブジェ、軍の絵画、書の展示があった。館内はモダンでゆったりとしたスペース、天井からの自然光と照明を上手に取り入れ快適な空間だ。建物のまわりと中庭には噴水や彫刻がありくつろげる。中国の伝統的な作品が多いが、文革以前に東京芸大に留学した画家の作品や、革命以後西洋に留学して戻ってきた人たちの作品が目を引く。革命の最中、政治色の強いテーマで描かなければならなかった時代の作品にも光や影を印象派のタッチで描いたものがあり、アーティストの思いが伝わってくるようだ。 軍の絵画部門では入ってすぐのところに大型の墨絵風の絵があり、周恩来が軍病院で最期の時を迎え?小平が手をとっている。


広東美術館のこれは裏門。ジャコメッティ風の彫刻と面白い噴水が。その向こうの赤い屋根はコンサートホール


広東美術館中庭の彫刻。なぜかアインシュタインの顔が。

館内には本格的な中国茶を飲ませるティーショップとしゃれたレストランがある。しかし、ウエートレスの一人の服装には一瞬「んっ?」。 身体の線にぴったりのシルクサテンのロングスカートには深いスリットが入り、ノースリーブの上着の襟にはスパンコールやビーズがぴっしりと縫いこめられ、どう見てもナイトクラブ嬢。でもよく考えてみれば中華レストランのウエイトレスももセクシーなチャイナ・ドレスを着ているから、その辺の発想かもしれない。 きりっと冷えた青島ビールがおいしかった。


珠江を望む屋外のカフェ。芝生の庭の随所には彫刻が。


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