2004年1月5日号

フランス・イタリアの旅 5


ミラノ

ポルディ・ペッツォーリ美術館 Museo Poldi-Pezzoli
 

ミラノ観光は夕方フィレンチエに向かうまでの短時間しかなかったので並み居る多くの美術館の中から一つだけここを選んで出かけた。古い石造りの建物が並ぶ一角にあり、中庭を入った突き当たりの入り口はブティックのような佇だ。こじんまりした個人の邸宅のせいか訪れる人も少なくゆっくりと落ち着いて楽しめる。 ポッライウオーロPollaiuoloの「若い貴婦人の肖像」や「聖母子」をはじめボッチチエリなどの15−19世紀の絵画、タペストリー、家具、食器、武器甲冑類、宝石類などジャコモ・ポルディ・ペッゾリが情熱を傾けて蒐集した作品はどれも見応えずっしり。無料で貸し出している日本語のオーディオガイドがよく出来ていてさらに楽しめる。建物は大戦で大きな被害を受けたが入り口のエレガントな螺旋階段と奥の二部屋だけは空襲を免れ、当時の裕福な貴族の生活が覗えるようだ。

ドゥオーモ

天を突き刺さんばかりの夥しい数の尖塔。その天辺には聖人像が。よく見ると一つずつ全部違う。14世紀後半のミラノ王、ジアン・ガレッアゾ・ヴィスコンティが男子王位継承者を願って聖堂建築に着手したのだが完成を見たのは19世紀初めナポレオンの時代。 ヴィスコンティの願いはかなったのだがその男子後継者ゴヴァンニ・マリアは冷血残忍だったため王位に就いて間もなく暗殺されてしまった。 イタリアは圧倒的にカトリックの国。中世から今日に至るまでドゥオーモはカトリックの隆盛とともに人々の心を支える一方、多くの権力争いも見てきたのだろう。

荘厳なゴシック建築としてバチカンの聖ピータース聖堂、スペインのセヴィール聖堂に次ぎ、ヨーロッパで第三の規模。炎天下の外から入ると重厚な石造りの内部はひんやりと心地よい。仰ぎ見るステンドグラス、床のモザイク模様、力強い柱など内部も荘厳。

ドゥオーモの屋根から眺めたガッレリアの入り口

ヴィットリオ・エマヌエーレ2世ガッレリア Galleria Vittorio Emanuele II

アーチ型ガラス天井、舗道のモザイク模様、天井近くの壁画など、19世紀ベルエポックの美を集大成したような見事なアーケードだ。繊細でやわらかい曲線を多く用いたフランスのアール・ヌヴォーとは趣が異なり、建物の柱や窓の回りの装飾などはイタリアらしい男性的な重々しさを感じさせる。

アーケードの両側にはブティックやレストランが並び、その中の一軒で昼食。ウエイトレスは愛想がいいし、もちろんワインとスパゲティも美味しい。その後ドゥオーモを一巡して入った外のカフェでは喉の渇きをいやすべく飲み物とアイスクリームを。イタリアのアイスクリームはさっぱりとしてききしに勝る美味しさ。 表に張り出したテーブル席で人間ウオッチングをしていると時間のたつのを忘れてしまう。 観光客はTシャツにジーンズとおおむね同じようなスタイルだが、イタリア人のファッションセンスと美男美女の多さには感心させられる。 若い人はもちろん、少し体型が崩れ始めた中年も老人も皆背筋と足をピンと伸ばし、さりげなくしかもピシッとどこかで決めた独自のスタイルを誇っているようだ。さすがミラノファッションのお膝元。

ドゥオーモの反対側にはレオナルド・ダ・ビンチの像


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