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【9月8日号】【9月3日号】【8月2日号】

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9月8日


「荒れ模様の夏 2」

 アジアの経済危機そして人民元が危ぶまれる中、首の皮一枚で繋がってる感じの香港ドルぺグ制はこのところ投機筋にかき回され、政府は必死の攻防戦でHK$180億投入。この額はなんと香港の赤ちゃんから引退した人まで含む総人口の1ヶ月分のボーナスに当たるそうな。香港政庁ってすごい金持ち。しかし企業の倒産が続き、続出する失業者にとって社会保障ないに等しいこの地で生き延びるのは非常に厳しい。

 給料の遅配が続き、挙げ句の果てに企業側は突然閉鎖して何の通告も無いまま解雇された人たちが補償を求めるニュースが相次いでいる中、8月末で松坂屋が香港から撤退、23年の幕を降ろした。12月末には日系デパート最古参の大丸も撤退の予定。両デパートとも6ヶ月の解雇通知を出し、松坂屋から解雇された155人の従業員にはきちんと補償もされたようです。昨年末倒産したヤオハンでは突然失業者となった2、700人の元従業員が補償を求めて労働省に当たるLabour Departmentに訴えていた騒ぎとは対照的な静かな幕切れでした。小売業界の不調が目立ち、再就職には厳しい条件が揃いすぎているけれど、松坂屋のキャリア23年のある売り場担当の女性はその豊富な経験と接客技術を買われて陶器会社から口がかかり翌日から以前よりアップした給与で働く事になったそうです。ほんの一握りながら一服の嬉しいニュースでした。

 香港の重要な産業である観光も97年7月の返還を潮にぱたっと半減。一時、熱狂的に押し寄せた後変わり身の早い日本人観光客も節操がないようだけど、すっぱ抜かれたホテルの日本人用特別料金にはさもありなんという感じ。物価高で香港がショッパーズ・パラダイステルでなくなってしまった昨今、ホテルのみならず、レストランやブティックでも日本語のメニューで割高なものを薦めたり日本人料金はいけません。 また、松坂屋のかの再就職成功組みたいに優秀な人も中にはいるけれどお店やレストランの店員さんの接客態度も大いに改善の余地あり。例えば、店頭で自分の探しているものがあるかとを聞くと調べもしないでにべもなく、「ない!」 と言われる事が今でもあるし、(自分で探すとちゃんとあったりする) ひどい時なんか英語なんかで尋ねるとまったく無視されるか、早く帰ってくれみたいな態度を取られる事も。 タクシーの運転手も運が悪い時は行き先を言っても返事もしないから ほんとに目的地まで運んでくれるのか着くまで心配という事も多々あり。


大企業のカスタマー・サービスや電話によるホットラインの等の対応はこのところ大分良くなった気がするけれど、乗り物やエレベータの乗り降り等をはじめ、全体的に香港市民のマナーは発展途上国。 随分前から続いている「ごみのポイ止めようキャンペーン」に加えて去年あたりから各種接客マナーや市民生活のマナー向上を促すテレビ広告が流れていてこれまたユーモラスでなかなか良い。在住15年後、5年ほど前に帰国して今夏3年ぶりに来港したイギリス人の友人Sueの到着1日目の印象は、「すごく変、香港は変わった。皆礼儀正しくなった。」 そうです。はたして、キャンペーンが功を奏してきたのか市民意識が向上したのか。確かにずっと以前にはなかなかお目にかかれなかった感じの良いサービスを受ける機会が少しづつ増えてきているし、業者の商品知識も向上している。

 9月1日から営業開始した First Bus もそんな市民の期待の中で登場。劣悪サービス・老朽車両で悪評だったChina Motor Bus (略してCMB)は長年香港島のバスルートを独占していたけれどついに政府フランチャイズ許可の更新に失敗、まず、先ごろ一部をCity Bus に、続いて今回残りを First Bus にバトンタッチ、65年の歴史に幕をおろした。一部まだ、CMBの古い車体に新しい名前だけ貼った車両も走っているものの、白を貴重にオレンジ、グリーンの斬新なデザインの新型車両は街中に爽やか。運転手も白いシャツにベストとさっぱりした制服に身を包み乗客に対するマナーの大事さを強調されているとかで、安全性とサービスのグレード・アップに期待したいところです。




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9月3日


「荒れ模様の夏」

 8月も終わってしまった。にっぱち、じゃないけど7月、8月はみんな大なり小なり休暇に行くから通常は静かな月なんです。ところが今年は例年とちょっと違う。

 いえ、香港の街は相変わらず、騒音の渦。土、日の繁華街は夏のセール最後の買い物の人手でごったがえし、通勤列車内では大声で携帯電話、オフィスビルの狭いエレベータ−内では何を興奮してるのか鼓膜が爆発するほど大声でしゃべってたかと思うと突然ワーッと笑い出したり、オフィスに着く前に目玉が渦巻き状態になっちゃいます。オフィスでは通勤途上仕入れてきた朝食を堂々と召し上がってらっしゃる同僚諸君。こちらのオフィスは日本の外資系企業等で見られるようにデスクが低い間仕切り囲まれているので座っていると何をしてるか周りに分からないのです。中国人ってグルメなんだけど自分では料理どころか家事一切出来ない人がとっても多いのです。まず典型的な金持ちは代々、料理、子守り、洗濯、など何人もの使用人を家に置くのが習わしで家事をしないまま一生を終えるのです。一方、庶民は金儲けに忙しいから家事は住み込みのお手伝いに任せるため、あるいは家が狭すぎて台所のスペースが無いに等しい状態だからそこに目をつけた安い外食産業が伝統的に繁栄しているのです。何時の世も。つまり、家が狭くて息が詰まるから勢い外に出て楽しむことに情熱が傾くらしい。それにしても朝食ぐらい家で食べたらっ!

 お昼時のレストラン街はおなじみの阿鼻叫喚状態。(もっと静かに食事を楽しめないのッ? せめて口の中に入ってるのが無くなってからしゃべってよねッ、と怒鳴れない私。 周りがうるさいからそれに負けない様にしないとおしゃべりが出来ないのは道理だもんね) 不景気だからタイのリゾート地なんかはすいてるかと思うとホテルは満室で夜中まで元気な広東人だらけ。香港ってゆっくり過ごせる所がないからホリデーシーズンになると東南アジアのリゾート地はどこも香港チャイニーズでいっぱい。香港の喧騒を逃れ、アンダマン海に面する椰子の木陰のプールデッキで寝そべって昼寝の間に読書でもと楽しみにしていたのに何家族も連れ立ってやって来ている元気印三重丸の広東人グループに完負。

 広東人ってなんでこんなに元気なの?時々思うに声の大きい事、食べ物に関する情熱、何でも値切たがる、商売上手、派手なファション、新しい物好き、熱しやすく冷めやすく、ぶっちゃけた性格など大坂人(特に南の方?)と通じるものが多いような気がする。 もっとも、タイにも丁度お盆休みに当たったためか日本人観光客(特に関西系)が多かったけど、比べるとホントお上品。 耳をすましても聞き取れないほど。外に出ると猫かぶってるのかしら? 声の大きいのは南の風土から来るのかなあ。中国人でも北方の人の方が(少しは)静かな気がするし、香港の外国人人口ナンバーワンのフィリピン人のメイドさんたちが日曜日のセントラル地区に集まって一週間分の情報を交換する声の渦は広東人も恐れ入りましたと引き下がるほど。彼女達に言わせると広東人の方がうるさいらしいけど、おとなしい日本人から見るとどっちもいい勝負。

 そういう香港に押し寄せていよいよ深刻になってきた不景気。ちょっと前までひと頃の日本のバブルよろしく株や不動産は空前の高値を更新し続け人々は投機熱に浮かれていたばかり。 不動産価格は数年で4ー5倍になり、売買が完了する前に何回も転売されるという滅茶苦茶な事がまかり通り、昨日までレストランや美容院で働いていた人達までが鍋やはさみを捨て続々とにわか不動産仲介業者に転身。

 そんな中で香港では限りのある瀟洒な邸宅があちこちで取り壊されその後にニョキとミニ開発のマンションが建ったかと思うと取り壊しが始まり、隣の邸宅も取り壊し。2つの敷地を得ると今度は小さいプール付きの少し大きいマンションが建ち、やっと外壁タイル工事が終わったかと思うと今度はタイルをはがしにかかった。最後は総花崗岩貼りでおさまったけど道路沿いの塀の上には泥棒よけのガラスの破片がびっしり埋め込められてはいかにも悪趣味。これ、我が家のすぐ隣の敷地なのでこの間2年ぐらいずっとジャックハマーの騒音と埃に悩まされ、こういうもったいない事を繰り返す奴は絶対天罰があたる、と呪ったものでした。家賃も少し遅れて同様に値上がり、家主は欲の皮が突っ張り、とてもまともな商売では払いきれない家賃を要求し当然空室が続出。おりしも面倒なホテルを軒並みつぶして建て変えていたオフィスビルや郊外の大型団地等が市場に出回り一挙に供給過剰状態。そして株は暴落、不動産価格も急落、ここへ来てどこまで落ちるか先が読めない状態に突入。経済はマイナス成長に落ち込む。不動産転がし屋と欲張り家主は自分で自分の首を締めるだけじゃなくて香港経済を混乱に陥れた犯人の一部だあー。



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8月2日


成都・昆明の旅 3

  3日目、成都より昆明へ。10年前に北京 に行った時乗った民航を想像していたのですが、現在は分割されサービスもずっと良くなったよう。1時間ほどの国内便なのに食事が出され、結構おいしかった。長男はずうずうしくお代わりを貰っていた。こういう乗客は少ないでしょう。雲南省の省都、昆明は四季を通じて温暖でスプリング・シティーとも呼ばれています。それもそのはずタイまで汽車で1日で着くのは成都行くよりも早い。着くとあいにくと雨。この時期、雨季で毎日必ず雨が降るんだそうです。空港で昆明事務所長の沈さんご夫妻のお迎えを受け、市内のホテルに。交通渋滞は雨のせいかと思ったら来年開催される花博に備えてあちこちで道路の突貫工事をしているせいとか。

 夕食は沈ご夫妻と民族ダンスを見ながら雲南料理。雲南のお茶はやはり蓋つきの茶碗にお茶の葉の他にいろいろなスパイスや干した花、(果物?)等が入っていて、それに1mぐらいの長さの細い注ぎ口がついた薬缶を持ったおじさんがカッコつけてお湯を注いでくれる。しかも茶碗のなかのものが良く攪拌するように回しながら入れてくれるから、お湯かけられるんじゃないかと心配したけど、御見事でした。地場の“大理ビール”(大理石の産地)というのを試してみたけど、あっさりしすぎで青島ビールのほうがおいしかった。お料理は四川料理ほど辛くなく、珍しいきのこ類の料理が多くヘルシーな感じ。夫がここに来ると楽しみにしている料理は過橋米線。一見味噌汁のような鶏スープの上を1ー2cmほどの油で覆ったもので、そこに各自で薄くスライスした魚、肉、野菜、麺等を入れて食べるもの。 このスープは煮えたぎっていてその上の油は熱を封じ込めるためのもの。だから、材料を入れてかき混ぜると即、必要な加熱ができるというしかけ。これは北京でも食べた事があるけど、その昔、科挙の受験勉強に集中するため、受験生を池の真ん中の小島に閉じ込め、台所から橋を渡って遠い小島まで運んでも冷めなく、暖かくて元気が出る食べ物として考案されたらしい。レストランはウィークデイだというのに満席。このあたりは少数民族のメッカでさっきからいろんな民族の衣装で若くてスタイル抜群のダンサーがそれぞれの楽しそうな踊りを披露してくれている。同席の沈夫人の顔も彫りの深いエキゾチックな感じ。彼女は雲南大学で勉強した日本語をいかして広州の日系企業で働いている時、当時広州事務所で働いていた沈氏と出会い、結婚。しばらく広州で暮らしたけれど肌に合わなかったのか彼女の出身地、昆明に二人で転地。その気持ち分かる気がする。雲南の人のほうがずっとおっとりしているし物価も安いし、暮らしやすそう。

 4日目、夫は仕事に、私たちは沈夫人の案内で車で2時間あまり先の名勝、石林へ観光ツアー。太古の昔海の底だったこの辺りはその後地殻変動で隆起した石灰の表面が長い年月の間にさまざまな面白い形に彫られ、大小の鋭い石が空から地表に突き刺さっているよう。別名チャイニーズ・グランド・キャ二オン。ここでは、少数民族の衣装を纏ったガイドのお兄さんを頼み、昼食をはさみ3時間ほど迷路のような長い長い階段や遊歩道をめぐり、相当歩きでがありました。途中、剣池や小さい石が並ぶ原っぱなど視界が開ける場所もあるのですが、巨石群はあちこちで名前や民話のいわれなんかがあってなかなか面白く、圧巻でした。さすがに重要な観光地らしく、メンテナンスもかなり真面目にしているようです。次男はガイドのお兄さんに草笛を教えてもらい帰りの道中ずっとこれにはまっていました。こうして旅の楽しさを掘り起こしてもらえるのも沈夫人の懇切丁寧なお世話があればこそ。1日をわざわざ私たちのために潰して貰って申し訳ないと思っているのに、子どもがブツブツ言い出すとアイスキャンデーやら水やらサーと買ってきて”いいからいいから”と言ってお金も受け取ってくれない。すいません。お世話になっときます。

 5日目、週末に入ったので夫も合流して雲南省最大の湖、昆明湖畔の龍門に。週休2日制は香港より先行してます。龍門は湖畔の絶壁にそそり立つ寺門でここからの湖の景色は絶景、はるかに昆明市街も見渡せる。ここに登る2人乗りリフトがこれまた恐ろしく前時代的。中国国内の乗り物では色々スリルを味あわせてもらうけどどうも苦手だわ。最後の夜だからもう一度雲南料理をと楽しみにしていたのに、次男の得意技、旅先での頭痛、発熱。ホテルに頼むと常駐しているのかすぐお医者さんがきてくれ、夜帰る前にもう一度様子を聞いてくれてとても親切。もう一度の雲南料理はオジャン。最後の夕食はホテルのルームサービスとあいなりました。

 今回の旅行では我が家としては驚くべき事に喧嘩がなかった!特に反抗期まっ盛りでぶつかってばかりいた長男、家族と離れて暮らすようになってありがたみが分かったのか、寮生活でアクが中和されたのか随分お利口さんになったもんです。



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