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4月20日


「NZ学校訪問の旅 ー 9」

9日目

月曜日で学校が休みなので男の子全員連れてシティ・センターにあるオタンコナス銀行に長男の口座を閉める手続きをしに行った。相変わらずStatementの行方は知れず再発行には料金がかかる等とまたバカなこと言うので「冗談も休み休みにしてよ!!」と無料で送付する旨のメモを用意し担当者のサインと銀行のチョップを押してもらった。 そうでもしない限りこの先またどうなるか分かったもんじゃない。 プンプン!筋向かいの別の銀行に行くと新規の口座開設には予約が必要で木曜日まで待たなければならないとか。 木曜日にはシドニーに移動するので近くの街中の支店に問い合わせてもらったがどこも同じような状況らしい。 結局M子さんに電話で相談して彼女の家の近くの郊外型支店に長男を学校から早引きさせて手続きすべく火曜日の午後に予約してもらった。 この間長男以外の男の子達は目抜き通りの店を冷やかしていたがそれに飽きると道端でまたハッキー・サックに興じている。

お昼近くになってDevonportに向かうべくQuay Street にある煉瓦造りの古い建物、Ferry Building に着くとレイも間もなく現れた。Devonport までのフェリーは30分毎に出ているが丁度出発間際のがあったので慌てて一人づつに大人NZ$7子供NZ$3.5の往復切符を買ったが後で気がつくと5歳から15歳までの子供4人と大人1人、または大人・子供2人づつでHK$15というファミリー・チケットがあったのだ。失敗した!必ずしも本当の家族でなくてもよいのだろうが、もし5人とも自分の子だとしたら歳は皆殆ど一緒だしハーフの子達は違うダンナの子ということになってややこしいなぁ、などとバカな事を考えてしまった。今日はまだお酒も飲んでいないのに。 しかし、家族向けにこうした優遇パッケージがあるということには社会が成熟しているのを感じさせる。 それとも子供の人口を増やしたいのかもしれない。

オークランド市街地の対岸 Devonport までは10分ほどの短い航海だが遠ざかるオークランドの街を見ながら男の子達はお腹が空いて我慢出来ないとフェリーの中にあるバーでミート・パイを買ってパクついている。 着いてから美味しいもの食べようと言ってるのに。 こういう所のコーヒーには余り期待してはいけないのだが試しに飲んでみると意外にもしっかりおいしい。バーのおじさんは入れたてのコーヒーをカップにたっぷり注いでくれた。「ミルクは?」と聞くと後ろのテーブルを指差しミルクが入った大きなジャーが二つあるので好きなだけ入れてちょうだいと言ってくれた。 さすが大いなる酪農国!

Devonport の通りには19世紀に建てられた後修復された建物、博物館、アートギャラリー、アンティークシップ、カフェ等が並んでいるが、目抜き通りの Victoria Road にあるイタリアン・カフェーバー”Manuka”は正解だった。 歩道に張り出したテーブルを二つくっつけてもらい、レイがジンジャー・ビールのジンジャーという所を隠していかにもビールの小瓶をラッパ飲みしている所をカメラに収めた。 炭火のかまどで焼いたというビザが売り物らしい。アダムとケンゾーは大きなピザを一枚づつぺろりと平らげ満足げ。 レイが食べているトマトソースの丸いパスタも一口貰ったが非常にイケル。 残りの私たちはチキンとマッシュルームのホワイトソース・ペンネ。パスタの茹で加減、マッシュルームの新鮮さが抜群。 冷えた白ワインもグーだ。

大満足の昼食の後、道路向かいの博物館に入る。だいたい、オークランドでさえもひなびた感じがするのだが、ここまで来るとその「ひなびたさ加減」はかなりのものでこの博物館などは前にいつ時頃入場者があったのか疑問に思えるほどだ。 入ってから出るまで誰にも会わなかったし、アンティークものを主とした陳列ケースもガラガラだ。 ひょうきん者のケンゾーにつられて長男も自ら「珍しい陳列物ポーズ」をとって皆を笑い転がせる。 波止場から始まったVictoria Road の終わりは ミニ火山 Mount Victoria の登り口。 このあたりにも古い民家が並んでいて必ずしも手入れが行き届いているものばかりではないが、どこもレース状のテラスの飾りに特徴がある。

男の子達は一目散に駆け上っていったが、私はサンダル履きでハーハー言いながらやっとの思いで頂上にたどり着く。 なるほどこれが360度のパノラマ。 オークランドの市街地がハーバーを隔てて広がりその続きにミッション・ベイ。 山の反対側にはノースショアの町並みとワイテマ・ゴルフコース、田園風景が広がるグリーン、グリーン、グリーン。 湾の外にはRangitoto Islandを始め大小様々な島がのんびりと浮かんでいる。 ふと気がつくと男の子達の声が遠くからかすかに聞こえるが姿が見えない。 いたっ、やっぱり、山の反対側の斜面でどこで拾ってきたのか段ボールをソリにして草スキーに夢中になっている。 風がびゅんびゅん強く、寒くなってきたのでそろそろ行こうと言ってももう一回、もう一回と熱が冷めない。 カッコつけたがる年頃だがこれじゃ小犬と変わりがない。 しかしレイ以外のこの子達はこんなに広い草の上で転がって遊ぶという経験をしないでここまで大きくなってしまったのだ。

帰路オークランド中心のスカイタワーに登ってみる。今し方登ってきた対岸の Mount Victoria をはじめ街外れに芝生に覆われたかわいらしいミニ火山がいくつか点在している。 火山というと雄々しいものを感じさせ、昔読んだ星の王子様に出てくる小さい小さい火山はピンと来なかったが、実際モデルがここにあったのだ。 星の王子様が朝ご飯をこしらえるのに使った可愛い火山。






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4月18日


「NZ学校訪問の旅 ー 8」

8日目

日曜日。今日と明日は学校が休み。 さて、男の子達をどこに連れて行こうか。 夕べ10時過ぎに食事から帰ってきてから皆近所に住んでいるデノムのお父さんの家にSky TVでスーパー12のOtago Highlanders vs.Aukland Bluesのラグビーゲームを見に行って約束通り12時に帰ってきたが8時を過ぎてもまだ起きてくる様子がない。 このモーテルにはエアコンがないので隣の部屋の男の子達は寝室とリビングの窓を開け放ってスヤスヤ気持ちよさそうにお休みだ。 開いてる窓から声をかけるとぞろぞろと出てきた。

朝食後、ケンゾーがテニス・シューズを買いたいと言うので New Market に行くことにした。彼はラグビーのない夏の間はテニスをしている。 何をやらせても運動神経抜群でテニスも相当うまいらしい。 香港にいた頃は夏休みになると毎年フロりダまでテニスキャンプに行っていたものだ。 アダムは陸上競技に専念しているとかで、上級生に混じってもさすがにどの競技でも一番先頭を切って走っていた。

New Marketには映画館やしゃれたカフェ、トレンディーなスポーツショップが多く並び何軒か回った後、ケンゾーは無事気に入ったテニスシューズを見つけた。 どさくさに紛れ次男にはNZ$60のラグビーシューズを、長男にはNZ$68のビラボンのシャツを買わされてしまった。 香港で買うよりは幾分安い。 私は同僚のお土産用にハッキー・サックを三つ買うからと値切ってNZ$25にしてもらった。 プラスチックのビーズが入ったお手玉のようなものだが固く編んだ袋は色や模様がさまざまで可愛い。 サッカーの練習に流行っているそうだ。 続いて$2ショップに入る。広い店内にある商品どれも$2。男の子達はサングラスやネックレスを、私は自分用に麻100%のティータオルを2枚。 一つはNZの観光マップのプリント、もう一つはNZの嘴の長い黒い鳥、キーウィーがオール・ブラックスのジャージーを着てHakaをしているところ。 Hakaはもともと敵を威嚇するためのマオリの戦の踊りだがラグビーの試合の前の景気付けによく行われる。 何度聞いても私には「頑張って、頑張って、こーら、こーら」としか聞こえかったのだがこういう内容だったのだ。

HAKA

Ringa Pakia, A, Ka Mate,
Ka mate
Ka ora, Ka ora
Ka mate, Ka mate
Ka ora, Ka ora
Tenei te tangata
Pu huru huru
Nanna i tiki mai
Whaka whiti te ra
A, Upane, Kaupane
Udane, Kaupane
Whiti te ra, Hii.

TRANSLATION

'Tis Death,
'Tis Death
'Tis Death, 'Tis Death
'Tis Life, 'Tis Life
This is the man, the fierce
powerful man,
It was he who captured the sun
and caused it to shine
it rises and sets
Rises and sets
The sun Shines!

昼食はショッピングモール内のインターナショナル・ファースト・フード・コートで男の子達はマクドナルド。こちらはさすがに香港の値段には勝てないようだ。 中華料理、お寿司等も売っているが私はトルコ料理のムサカにスパイス・ビーフライスをつけたセットNZ$7にした。けっこういける。 ここのカプチーノも本格的でおいしかった。

さてお楽しみのゴーカート。 香港にはゴーカートがないから香港ボーイ達はおおはしゃぎ。 パーネルの坂下、オークランド駅に近い巨大な倉庫に古タイヤを並べただけのコースだが週末は混み合うので予約が必要。 前もってM子さんに予約してもらっていた4時前に着くと間もなくレイもやってきた。 予約の時間がずれ込んでいるのか待たされた間男の子達5人は向かいの空き地に円陣を張りハッキーサックに興じてご機嫌だ。 結局30分ほど待った後、全員オーバーオールとヘルメットを被させられ30分みっちりF1になったつもり。 しかし一人NZ$30は安いとは言えない。

夕食前にM子さんのお宅で食前酒を頂く間、男の子達は「食前食」。 食べ盛りのこの子達はレストランで普通の量だと物足りないので振る舞われたホームメイドの餃子に大喜び。 人心地付かせたところで男の子達にはミッション・ベイのフィッシュ&チップスまで歩いて行くように言い渡し、大人だけ車で出発。 ミッション・ベイは周りを高級住宅に囲まれたこじんまりした海岸で日本で言うならさしずめ湘南といった感じ。 海岸沿いの公園や道路にはローラーブレードやジョギングをする人がいるが混んでいないのがいい。 もっといいのはどこにもけばけばしいネオンの類がないことかもしれない。 海からの風が木々の豊かな葉をそよそよさせ心地よい。

Fish Pot Cafeは海岸通りに面した大衆的な店。 席に着きM子さんのご主人が長いキャンバス地の袋からやおら取り出したのは冷えたワイン。 店の人にワイングラスをもらって注いでくれた。 ここも飲み物持ち込み可なのだ。 一人につきわずかなチャージがあるそうだが自分の気に入った物が飲めるしとても合理的。 食事もさすがお気に入りのお店だけあって味も量も申し分ない。 バスケットいっぱいに盛られた量は次男や私には多すぎるぐらいだ。 8人でお腹一杯食べてNZ$120。 おまけにNZではサービスチャージもない。 香港じゃ10%のサービスチャージがついた上にチップを置かなければいけないのだ。 もうこれからチップなんか置くのやめだ。





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4月9日


「NZ学校訪問の旅 ー 7」

7日目

土曜日。 レガッタの日だ。 朝 5時半に起床して昼食用にサンドイッチや果物、飲み物の用意をする。 レガッタ会場はオークランド市街からハーバーを隔てた対岸Takapuna(タカプナ)にあるLake Pupuke(ププキ湖)。(これらの地名はポリネシアから移住して来た先住民族のマオリ語。 ひとつの子音に必ず母音が付いていてローマ字読みできるので日本人には馴染みやすい。

地図でみると結構大きな湖だ。会場までどうやって行けばよいのかヘッドコーチに尋ねたところ、「この人に連絡してみたらきっと何とかしてくれるはずですよ。」とU15(アンダー15、つまり15歳以下のローアー)の委員をしている Sue の名前と電話番号を教えてくれた。 一面識もない彼女に電話したところ、どうせ通り道だからと快く当日の朝7時過ぎにご主人のRayと一緒にモーテルまで迎えに来てくれた。 一時間ほどのドライブで会場である湖畔の公園に到着。 オークランド内外のセカンダリー・スクール20数校のテントがあちこちに張られており、それぞれの学校のトレーラーにはボートが満載されている。 驚いたことにボートだけではなく公立、私立を問わずどの学校も自校の紋章入りトレーラーを持っているのだ。 長男の学校のバスとトレーラーも既に到着しており自分たちの出番を待つ間 トレーラーに積んである段ボール箱いっぱいのバナナをつまんだり巨大なタンクからジュースを飲んだりとのんびりしている。 時折差し入れのホームメイド・ケーキも届く。

Sueは早速U15の生徒達の親を片っ端から紹介してくれた。 子供たちはForm4になったとはいえローイングはまだ一年目で「新米のママ」達同士すぐに打ち解けて仲良くしてもらった。 12月半ばから1月末までの長い夏休みのまん真ん中にあった全員参加の合宿に長男を参加させるかどうかもめている時、合宿が終わってから学校が始まるまでの2週間長男を預かってあげましょうと言ってくれたファミリーがいた。 一番力持ちのドイルと勉強家のジュリアンのファミリーだ。 この時は結局レイの家にお世話になったのだが、そうでなければもう一枚往復航空券を買わなければならないところだったのだ。 それだけではない。 U15のコーチのジョンまで自宅で面倒みるから是非参加させてやって下さいと言ってくれたのだ。 結局彼は合宿先までの往復の面倒を見てくれた。 みんな大きな家に住んでいていて余裕があるのかもしれないが、それだけではないキーウィー・ホスピタリティーにしばしば感激させられる。

この日はカンカン照りかと思うと曇ったり、風が吹いて寒くなったり、小雨が降ったり、とめちゃくちゃなお天気。 連日熱かったので私達は薄着でやって来てしまったが、次男は長男からトラックスーツを貸してもらって嬉しそう。 うまい具合に委員会の両親たちが学校のローイング・クラブ用に作った暖かそうなスエットシャツを売っていたので一枚購入して早速着用。 名前を書いたステッカーもつけてくれたのでぐっと連帯感も出てきた。 彼らが着ているローイング・クラブのポロシャツは夫へのいいお土産になった。 広い湖の上は白い雲が流れる真っ青で大きな空。 南太平洋から流れ着いたマオリはこの土地を Aotearoa (land of the long white cloud) と名づけたのだ。 それがこの国の始まり。

長男達のU15のレースは3回あった。小柄な次男はコックスを天職と心得たのかエドワードの見習いのようにに張り付いていろいろと手助けをやっている。 向こう岸まで一旦漕ぎ、そこから手前左手のゴールまでのレースだが、少し沖合いまで行ってしまうと広い湖に浮かぶ沢山のボートのうちどれが息子たちのなのか分からない。 ようやくそれらしいのが見えて来たからゴールを見届けようと走って見たものの思ったよりずっと速いスピードで突っ切っていく。 しかし、どういう訳か8人乗りの真ん中の子が一人漕いでいないではないか。 あとで聞くと漕いでいる間に前後に行ったり来たりするシートが外れてしまったのだそうだ。 初心者にありがちなハプニングで漕ぐ時の力の配分が平均にわたっていないから無理な力が当たった所でシートがレールから外れたのだそうだ。 それでも10数チーム中3位でゴールイン。 しかしコックスのエドワードのママは1位にならなかったのが悔しいらしい。「ほら、見ててごらん。今から皆でコックスを水の中に放り込むからね。」 写真を撮っておこうと向こうを向いているエドワードの名前を呼んだが何度叫んでも本人は気が付かない。 ところが母親が「イッド 」と叫ぶと一遍でクルッと振り向くではないか。 そうか、キーウィー・アクセントで言わないといけないんだ。

NZの英語は「Today」を 「to die」 という風に 「エイ」 の発音を 「アイ」 に変えてしまうオーストラリア英語に似ているが更に 「エ」が「イ」に、「ア」 が 「イ」 になり押しつぶしたような発音になる。 例えば、「アダム」が「エダム」に、「I had to」 が 「I hed to」 になり、次男の名前、「Zen」が「Zin」に、「イエス」が「イース」と言う具合だ。 人によっては更に「アイ」が「アー」になってしまう。 翌日行ったスポーツショップの若い店員さんは靴のサイズ9号と11号しか残っていない 「9 and 11 left」 というのを 「ナーン ン イリヴン リフト」と言うのでポカンとしてしまった。

そろそろお昼を食べさせようと子供を探しているとテント横のテーブルで豪勢なピクニックが始まっており、次男も紛れ込んでいた。「あんた、見掛けない子だわねえ、お金払ったの?」とエドワードのママがからかうのなんか全くお構いなく、次男はこんなご馳走見たことないとばかり無我夢中でおいしそうな丸いパンにそこいらへんのものを片っ端から突っ込み四つ目をやっつけているところだ。 「ママが作ったサンドイッチどうするの?」と言うと長男は 「これ、ママに作ってあげたから食べてごらん、すっごくおいしいよ。」と今し方詰めおわった丸パンを差し出す、のを思わず食べてしまった。 土曜日なので家族ぐるみの人が多く、湖のほとり一面の芝生では思い思いのパラソルを広げたり、大きなアイスボックスから食べ物や飲み物をマットに並べたりとすっかりピクニック会場だ。 子供たちのラグビー・トーナメントではよくピクニックをするがこの広々とした湖を臨むピクニックはまた一段とよい。 学校のテントではシャンペンやビール、デザートのフルーツやケーキも回っている。 父親達にはボートのメンテナンス、母親達には食料の調達というのが役回りらしい。

そんな彼らの中から一組の中国人のカップルに出会った。7年前香港から移住してきたが今でも香港にアパートを残しており毎年三回帰る時以外はお手伝いさんに留守番をさせているのだそうだ。 「こちらでビジネスを始められたのですか?」と水を向けると意外にもリタイアして今では3人の子供のお抱え運転手だとのこと。 ビジネスチャンスを犠牲にして Quality of Life を選んだのだそうだ。 金持ちになるほどにお金に執着するのが世の常。 ましてやおカネ第一の香港で潔く決断したものだ。 香港チャイニーズにしては珍しく静かにおっとりしゃべるWilliam と Cynthia は帰り道だからと私たちのモーテルまで送ってくれた。

夕方になりモーテルの駐車場で次男が大きな子とスケートボードをしている。 見るとその中にケンゾーとアダムがいた。 週末預かることにしている男の子達だ。 近くに住んでいるデノムのお父さんが全校陸上競技大会が終わった後学校から連れて来てくれたのだそうだ。 デノムは長男の寮でベッドが隣同士。 前日のカクテルパーティーの後、次男を引き取りに立ち寄った寮で彼のお母さんとおばあさんに会った。 両親は離婚しているので彼は1週間置きに父と母の所を行ったり来たりしている。 「ママに電話するから一緒にご飯を食べに行ったら?」 と言われ困ってしまった。 長男の寮では半数の子が離婚家庭だそうだ。

食べ盛りの男の子4人(その内アダムとケンゾーはハーフ独特のハンサムボーイだ)を従えて行ったレストランは土曜日の夜とあって混んでいてなかなかオーダーを取りに来てくれない。 やっと飲み物をオーダーして食べ物を頼もうとウェイターを呼び止めると「I can do one thing at a time」と憎たらしいことを言うではないか。 相手が向こうに行ってから悪口を言っていると、しばらくして 「さっきは本当にごめんなさい。そんなつもりじゃなかったんだど、ついあんなこと言ってしまって。お詫びの印に、 これどうぞ。」 とコーラをに二杯置いていった。 ウン、やっぱりキーウィーはいいや。 この地中海風レストランでは伊勢えびのグリル、リゾット、シーフード・スパゲッティ、ステーキなどどれもボリュームがすごい、すごい。 大食ナンバーワンの長男でさえデザートはもういいと言う。 人の悪い私はわざと遠慮がちで無口のアダムを説得してチョコレートケーキとレモンタルトをオーダーした。 彼はすごいマッチョマンだし父親はイギリス人だから必ずデザートを食べると踏んだのだ。 待つこと20分して4人分ぐらいの大きさのケーキの周りにクリームやらソースやらでデコレートした大皿が二つ運ばれてきた。 あー、幸せじゃ。 結局皆で奪い合って食べた。 これだけ食べてNZ$110 (4500円)。

勘定を済ませるとアダムがまず最初にありがとうと言った。 じゃ、とほっぺを指差すとお礼のキッスをしてくれるのだ。続いて陽気なケンゾーは熱烈 hug に熱烈キッス、残りの子も同様。 今日のワインは特別おいしかった。気分は最高。
つづく






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4月5日


「NZ学校訪問の旅 ー 6」

6日目

昨夜からの雨はどうもやみそうにない。 さて今日はどうしようかな、と思っていたらM子さんから電話。 素晴らしいお家に住んでいるお友達がいるからそのお宅を見に行こうと。 アパート暮らしの私にとってはM子さんのお宅で充分感激しているのだが「そんなもんじゃない」らしい。 せっかくのチャンスだからお邪魔することにし、M子さんにはお昼前に迎えに来てもらった。

そのお家のご主人は音楽家だそうでまず入り口の門が音符で出来ている。 門のインターフォンで名前を告げるとオートゲートが静かに開き、女子大生のように可愛い奥様が犬を連れて玄関まで迎えてくれた。犬の名前は「ハイドン」、猫が「モーツアルト」。 家の周りの美しい芝生の庭はプロのガーデナーに手入れされバラが見事。 玄関を入った先がホールになっており階上に繋がる優美な螺旋階段の途中にはバルコニーまである。 前庭を望む客間はよーく見ると部屋全体が楕円形。 内装や家具、調度の素晴らしさはもちろんのことかけてある絵やアンティークの小物にいたるまでそのコーディネートの見事なこと。 NZ人口の3分の1の人口が集中する都市オークランドの目抜き通りでさえ田舎っぽさを感じてしまうが、真っ青な空、グリーン&クリーンのこの国の人たちは皆夏でも冬でも戸外のスポーツを楽しみ、住環境といえば日本や香港の大金持ちでも手に出来ないまさに別世界だ。 このお宅は特別かもしれないが周りにはプールやテニスコート付きの大邸宅が珍しくない。 それらが皆美しい町並みに溶け込んでいるのだ。

丁度日本からのお友達も滞在中で女性四人(プラス次男)ここで夕方まで楽しいおしゃべりとご馳走で過ごしたのは言うまでもない。 次男は少し話に飽きると小雨の合間に早速家来に仕立てた「ハイドン」と家の周りのお庭を何周もかけっこしたり木登りしたりとここ数日の運動不足を解消。 いい目の保養もさせてもらいました。 最後にご馳走になったコーヒーもおいしかったのでちょっと秘訣をお願いしたところ浮かんでいるミルクの泡はトップがクリームになっている特濃牛乳をガラス容器 (紅茶を入れるシリンダー状のガラス容器より少し細めのもの)に入れ電子レンジで1分間暖めた後シャカシャカ泡立て、少し置いて泡がしっかりしたところでコーヒーに浮かせる、んだそうだ。 次男がはまってしまった不思議なドリンクは Spirulina (スピラリーナ)。 見るとドクダミ・ドリンクにそっくりのどろっとした液体はいかあの深い草色は一体どこから来ているのだろう、キーウィーフルーツだけではないことは確かだが??

この日の夕方は長男の学校のOBと在籍生徒の保護者のカクテルパーティー。 チャペル横の芝生で行われる予定であったが雨模様だったので会場はシアターホールに変更された。 次男は長男の寮の預かってもらえるとあって朝から楽しみにしていたのだ。

えんじ、白、黄色とスクールカラーの風船を螺旋状にねじった入り口のアーチをくぐると舞台では同じくスクールカラーのリボンを巻いたカンカン帽の生徒達によるデキシーランド・ジャズの演奏が始まっていた。 こういう場で飲み物やスナックをサーブするのは成績優秀な最上級生に与えられた特権だから皆心なしか誇らしげに、そしてにこやかに一生懸命働いている。 顔の広いM子さん夫妻と一緒だからよかったけれど「よそ者」で「新参者」の自分が一人で来ていたらどうなっただろう、などと思っていると髪も服装もお化粧もビシッときまった美しい東洋人の女性から「日本人ですか?」と声をかけられた。 ご主人を韓国に残しお嬢さん二人と4年前に移住し、上のお嬢さんが今年姉妹校である女子校からForm 6に入学したそうだ。 彼女自身は医者の資格があるので比較的簡単に居住許可がおりたそうだ。 この国では若くて専門技能を持つ人たちに移民の優先権を与えている。 しかし、肝心の職がない。 だから弁護士、会計士、エンジニア、金融関係のプロ達が香港くんだりまで出稼ぎに来るのだ。 正統派のしっかりした彼女の日本語はこちらに来て子供の教育と世話の合間に勉強したものだという。下のお嬢さんを家に一人残してきたからゆっくり出来ないがまたお会いしましょうと言って別れた。 その身なりと上品な物腰からしてきっと裕福な家庭だとは思うが韓国は今経済危機に加え通貨価値がガタ減り、そして彼女自身立派な職業を投げ打って、などと余計な心配をしてしまった。 しがない日本人サラリーマン家庭の我が家こそ何時まで資金が続くか危ういものなのに。

つづく






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4月5日


「NZ学校訪問の旅 ー4&5」

4日目

今回の旅行でもう一つ片付けておかなければならない用件があった。銀行である。 長男の学校関係の支払いに親用の口座と長男用に小遣いも引き出せてキャッシュカードで買い物も出来る口座を開設してあったのだが、長男の方の毎月のstatementが1ヶ月後からパタッと来なくなった。その内に来るかと思って放っておいたら8ヶ月後に残高が無くなって長男は文無しになってしまった。 親用の口座から送金するにしてもどの程度の金額が必要なのか知る必要があるのでファックスで銀行に問い合わせていたがなしのつぶて。 オークランドに到着した翌日から毎日電話をかけているのだが担当の部所は廃止になったので他の者に変わりますと電話を回してくれるのだが誰も出ない。

オークランド一番の目抜き通りQueen St と Victoria St の角にある本店に出向き責任者を出せといきまいたが受け付けは「そういう者は特におりません」というではないか。
私 「じゃ、私が送ったこのファックスは誰の所にいったのか」
受付 「さあ、誰かのところにはいってるでしょうけど・・・すぐには分かりません」
私 「息子の口座のstatementはどうして送ってこないのか」
受付 「送付先を調べます・・・・このビルの5FのPOBoxになってますけど・・・」
私 「そんな変更依頼してない、なんでや?」
受付 「5Fに行って聞いて下さい。」

しかたなく、5Fに上がってそのPOBoxとやらを聞いてみるが案の定「そんな物はない」と言われGFに追い返される。

私 「やぱりないって言われたけど一体どこなのっ、それ??」
受付 「わかりません・・・」
私 「じゃ、お金の出し入れそのコンピューターで調べてここでプリントしてよ。」
受付 「本人の了解がないとできません。」
私 「バカタレ、(とは言わなかったが)それは全部私の口座から移したお金じゃないの。 つべこべ言わんとさっさとせんかいッ(と言ってやりたかった)」

押し問答の上コンピューターで引き出せる過去3ヶ月のデータのプリントはくれたが全部の記録は依然として行方不明。調べて分かり次第連絡するということでこの日は引き下がったが、これだけで優に2時間の浪費である。 M子さんに言わせると、この国にはサービスというものがない。電話するというのはとにかく逃げたいからで絶対にかかってこない。銀行といえども平気で間違いをしょっちゅうする。 この日から4日間通ったが結局statementはどこに行ったのか分からず再発行して香港の自宅に送ってもらうことにした。原因について質したところ、返事がふるっていた。「誰かが間違ってコンピュータのデータを変えてしまったのかも知れない。」

頭から湯気を立てて表へ出るとどっと疲れを感じ、急に空腹が押し寄せて来た。 この日はM子さんに街まで連れて来てもらっており、お昼に老舗デパートの Smith & Caughey のコーヒーショップ待ち合わせをしていた。 この街で一番格式がありフロアもゆったりしているが大都市のデパートのきらびやかさとは程遠い。コーヒーショップもセルフサービスで内装や家具も極めて質素。 しかし高い天井、薄く押さえたピンクの壁とグレーの窓枠の室内はなんとなく品がある。 お客さんは圧倒的に老人が多いが皆きちんとスーツを着こなし女性は髪をきちんと結っている。 さしずめ40ー50年ほど前の田舎の高級老人ホームといったところ。 香港の豪華なホテルやレストランに慣れっこになった目には誠に質素なのだがしばらくするとこれで充分じゃないかと思え、狭い土地で不必要に豪華さを競うのがバカらしく思えて来た。 次男は大好物のマカロニ・チーズ・グラタンを見つけてぱくつく。 私はチーズとアロファロファのサンドイッチ。 カプチーノがおいしかった。 キーウィーはコーヒー愛飲家が多くこの後どこで飲んでもおいしかった。 カプチーノとならんで人気があるのが latte (ラテ)。 フランスの朝食用カフェオレのように大きな丼鉢に入れてくれるのだが単にミルクとコーヒーを混ぜたのではなく牛乳の泡が乗っかっており、カプチーノとどう違うのか不明。

人心地ついた次男に今日も行こうとねだられM子さんの車で学校に向かう。 この日はレイのハウスを見せてもらった。入り口にオールブラックスで活躍していたという彼女のご主人の叔父君が寄付した世界のラグビー・プレーヤーのジャージーが立派なディスプレーキャビネットに飾ってあった。 このハウスは1年目から二人部屋でルームメイトがまんべんなく変わるように定期的に部屋割りが変わるそうだ。 続いてチャペル。両サイドに並ぶ荘厳なステンドグラスの一つは1920何年かに若くして亡くなったおじいさんの記念に寄付されたのだそうだ。やはり、名門の家系のようだ。

帰路Remueraの住宅地にある公園に連れて行ってもらった。 良く手入れされた広々とした芝生の一角に斜面を利用した立派なスケートボード練習場とちょっとしたフィールドアスレチック器具がある。 次男は長男から借りて来たスケートボードで早速嬉々として練習を始める。 昼下がりの公園には私たち以外誰もいない。 全く貸し切り状態だ。

さらにNew Marketまで送ってもらい少し買い物をした後Smith & Caughey の支店があったので入ろうとするとすでに閉店。時計は5時30分。 日はまだ充分高いが道行く人出もぐっと減ってあたりの店も殆ど閉まっている。 この国じゃ皆早く家に帰ってお庭でワインを飲むのだ。 私もそうしよう。

つづく

5日目

朝早くからバカーン、ボコーンと外がうるさいと思っていたら次男がモーテルの駐車場や表の歩道でスケートボードの練習をしている音だった。そういえば昨日夕食の支度をしている間もずっと外で遊んでいて近所に住んでいる子供とも友達になったとか。早速昨日の公園に連れて行けとねだるのだが悲しいかな私は車の運転ができないのでああいう中途半端な場所はちょっと無理。

ブランチの後市内循環バスに乗るべく出かけたが、丁度1台やりすごしてしまったので20分程待った。 このバスは2年前に導入されどこまで乗っても一律NZ$1。 モーテルの部屋に毎朝入れてくれるThe New Zealand Herald の1面に載っていた記事によると市街地の交通緩和と空気汚染対策のため無料の電気バスに切り替える調査・計画に来年度予算としてNZ$50万申請したとある。 真っ青な空のこの土地に大気汚染など無縁に思えるが足の便はほぼマイカーに頼らざるを得ず、早めにこういう対策を立てるのは賢明であろう。 しかし、何故鉄道の事を考えないのかなあ。 空港・市内間ももちろん車しかない。

この日も銀行通いをしたが埒開かず、ツーリスト・インフォメーションでテレホン・カードを買ったり、格安航空券を扱っている旅行代理店を覗いたり、唯一の大劇場アオテア・センターで上演中の「レ ミゼラブル」の切符を買い、おいしいコーヒーを求めて Smith & Caughey で休憩した。 本当はアルバート・パークにあるアートギャラリーも観てみたかったが次男がウンと言わない。 中途半端にお腹を空かせた次男はシュリンプ・ソースの魚料理を選んだがハーフ・ポーションでも量が多すぎて食べきれない。 私はアプリコットがふんだんに入ったケーキのスライスに例のカプチーノ。夏の終わりのこの時期スーパーや果物屋で新鮮な果物が山のように積まれており、ケーキに入っている旬のアプリコットも肉厚でボリュームたっぷり。 おいしい、おいしいと言って毎日こんなに食べていたら後が恐い。

帰路のバスをパーネルの入り口で下り、パーネル・ローズ・パークのバラを堪能する。 すっかり咲きほころび見頃は過ぎていたがバラの種類の多いこと。 眼下に海を収め広々とした美しい芝生の公園の随所に見事な大木が生い茂り、枝が地面近くから伸びているので次男は片っ端から登りたいようだ。 一角にしゃれたテラスのレストランがありテントを張ってガーデン・パーティーの準備をしている。 雲行きがあやしくなってきた。小雨もぱらついてきた。

足早にモーテルに向かい公園を出ると3階建てテラス風のしゃれたアパート建設地があり新聞に広告があったのを思い出した。 帰ってから(買う予定なんかもちろんないが)販売代理店に電話をすると早速その夜資料を届けてくれた。 一等地とは言え180平方メートルのテラスハウスがNZ$120万(7600万円)、110平方メートルのアパートがNZ$69万(4400万円)とはこの国の物価からすると非常に高い感じがする。 各ユニットに冷蔵庫、オーブン、電子オーブン、ディッシュ・ウォッシャー、洗濯機、乾燥機が組み込まれ駐車スペースも含まれているとある。 小ぶりの家NZ$50万に比べると新築のアパートはかなり割高のようだ。 また場所によって価格にかなり差があるようだ。 中古住宅はオークションで売られるようで家の前の立て札に週末の日にちが記されていた。

そういう資料をパラパラめくり、チーズとサラダを肴にして冷やした白ワインちびちびやりながら夕食の支度をする。今日は本場NZステーキに、ポテトとマッシュルームのソテーとブロッコリ。 次男はテレビで「ベイウォッチ」や 「Sunny & Cher」などアメリカものにかじりついておる。Cherは最近また歌いだしたようだが昔懐かしいベルボトムが流行っていた頃 Sunnyとペアで歌っていたのだ。 つい最近Sunnyの死亡記事が出ていたからこれは彼の追悼様に作ったドラマかもしれない。 この頃は衛星放送が浸透して子供はどこに行っても同じようなアメリカの番組を観ているがコマーシャルはローカル色があって面白い。 絶壁にしがみついて必死の行状の男、カメラが遠ざかると何のことはない、足許は床から30cmも離れていない。「Can you get even more chicken than this?」 とはチキン・バーガーのコマーシャル。 かすかに日本語のアクセントがあるDr.ワタナビ(ワタナベだと思うが)が金髪女性を相手に15分ぐらい延々とソバカワ・ピローをあの手この手で実験をしていかに素晴らしいかを「実証」するコマーシャルに次男は痛く感銘してしまい買いに行こうとせがむ。 「ママが小さい時は日本人は皆そば殻の枕を使ってたのよ。」というと目をまん丸くした。

外では雨が本格的な降りになった。

つづく





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