2002年11月9日号


台北の旅ー淡水散歩

淡水河が台湾海峡に注ぎ出る河口の町、淡水(タンシュイ)は台北北部の古い貿易港。19世紀に最盛期を迎えたが、それ以前には17世紀に基隆(キールン)を征服したスペインが淡水にも勢力を伸ばし、1629年にこの地にサン・ドミンゴの要塞を建てている。スペインが撤退した後入ってきたオランダが1642年にこの要塞を建て直し、その後は明、清朝の統治下に。 そしてアヘン戦争後から1972年イギリスが中国を承認して台湾と断交するまでイギリス領事館として使われていた。その間1884年にはフランス戦艦から攻撃を受け、1895年から50年間は日本の統治下にとめまぐるしい歴史に翻弄されてきたのだ。赤レンガ造りのサン・ドミンゴは外国人が住んでいた要塞というところから地元の人は「紅毛城」と呼んでいる。 近くにある台湾一といわれる名門ゴルフ場、淡水ゴルフ場は日本が1919年に台湾最初のゴルフ場としてつくったものだ。

夫は東京へ、次男は台北在住の友達と出かけるというので、一人でぶらりと出かけることにした。淡水へはホテルからの最寄駅「中山國中」からMRTを2回乗り継いで淡水線の終着駅。片道小一時間のお手軽な日帰り旅行だ。初めての土地で乗ってみるMRTは最初ちょっとドキドキものだったが駅の案内表示も車内放送も英語があり分かりやすく迷うことなくスムーズな小旅行。

淡水の最重要観光スポットである紅毛城は月曜日が休館日。残念ながらこの日しか予定を立てられなかったので最初からあきらめていた。しかし淡水駅はオレンジ色の屋根、赤レンガの壁にアーチ、と紅毛城を思わせえる駅舎がうれしかった。

駅を出て賑々しさとなんだか物悲しさが妙に混じった雰囲気の商店街、老街。お天気も悪かったが閉まっている店が多かったせいかもしれない。しばらく行って訪れてみたのが福祐宮(フゥヨウコン)。屋根のデザインと装飾の華やかさは香港のお寺の比ではない。中にはやさしい顔立ちの媽祖が祀ってあり「天上聖母」と記してある。暗いがやはり内部もきらびやか。

中正路をさらにしばらく歩くと郷土の恩人マカイ博士の像がある。カナダ人宣教師、マカイ博士は1872年に台湾に来てから亡くなる1901年まで台湾の教育と医学の向上に貢献し、数々の西洋建築も残している。マカイ像のある交差点から路地を入ってみると赤煉瓦造りの教会の隣にマカイ博士が建てた台湾最初の西洋式診療所「滬尾階醫」(ウーウェイチェイクァン)がひっそりと立っていた。

中正路の建物がまばらになり、淡水河が見えてくると反対側の丘の斜面に紅毛城の門が現われる。やはり閉まっている。少し上に上ってみれば中の様子が見えるかとそのまま斜面を登っていくと立派な大学が。「真理大学」(Alitheia University)とある。手入れの行き届いた美しいお庭に惹かれてふらふらと迷い込むと赤レンガのかわいらしい古い建物が。医学の必要性を痛感したマカイ博士が1882年に設立したオックスフォード・カレッジの馬階記念資料館だった。真理大学の前身だ。

真理大学の周りには赤レンガの古い建物がいくつか残っている。その一つ、校庭の芝生が青々とした淡江中学はもと日本人学校だったそうだ。緩やかな坂道を下っていくとマカイ博士像に戻ってきた。ここでちょっと休憩。角の食堂のメニューを眺めていると中にいた愛想のいいおじさんが「オイシイヨ」と色々と勧めてくれた。何十年も前の日本の大衆食堂で見かけたような陳列ケースには冷奴、レンコンやかぼちゃ、茄子の煮物など懐かしい小鉢物が。昔の日本にタイムワープした気分。おじさんの片言の日本語と英語に私の片言の広東語を交えてしばしおしゃべり。台湾の春は霧が多く、夏は暑すぎ、冬はしょぼしょぼと雨が多く、秋は天高く最高なのだそうだ。ワンタンスープと土地の名物、酸梅湯(梅のジュース)を頂いてさよならした。

中山國中駅は高架駅。途中から地下に潜る。
MRT淡水駅 スペイン時代を思わせる紅毛城のイメージ
淡水老街 両側にびっしり並んだお店はほとんど食べ物屋さん。ちょっと小腹に入れるような小食やおやつ屋さんが主。
福祐宮 屋根のデザインと装飾の華やかなこと。
福祐宮の内部。媽祖が祀ってあり「天上聖母」と記してある
滬尾階醫 マカイ博士が建てた台湾最初の西洋式診療所
マカイ博士像 淡水の女性と結婚して亡くなるまで台湾に尽くしたとあった。
真理大学内 Pachiao Ta またの名を八角塔というらしい。紅毛城はこのすぐ後ろ。
馬階記念資料館 マカイ博士が設立したオックスフォード・カレッジの建物。
マカイ博士像のあるロータリー。革命豆腐ってどんなんだろう?隣の胡椒餅はひき肉の入ったパンみたいなもので淡水名物のようだ。この店ではひき肉を生地でくるりと巻いて鉄板で焼いていたが他の店ではオーブンで焼いていた。


台北の旅ー市内散歩へ(2002/11/01)

台北の旅ー故宮博物館へ(2002/11/04)

台北の旅ー八里へ(2002/11/15)


バックナンバー


「なにわの掲示板」
に ご感想、ご意見を書いていただくとうれしいです。



極楽とんぼホームページへ